第20章 こちらアラシノ引越センターの…②
30歳を過ぎての就職活動は難航した。
そりゃ、高望みをしてなかったと言えば嘘になる。
しかしいくらなんでも決まらなさすぎて、生活のために区内のマンションを出て地元に戻った。
ついでに家の近所の引越屋でバイトをすることにした。
そこでなんとよりによって…
潤と再会してしまったのだ。
◇
「うう…なんでこんなことに…」
潤が設定していった熱めのシャワーを浴びながら、混乱が止まらない。
そりゃ酒もちょっと飲みすぎていたけど、どうしてこんなことになった。
最初はよくわからなかった。
初めて作業服を着て朝礼で挨拶した時、目の端に潤みたいにやたら顔の濃いやつがいるのを感じていた。
そいつは俺のことやたら睨んでいるように思えた。
なんであいつは俺のことを睨むのかって思って、思い切って見たら。
まさか、あの潤だとは……
潤は関西の大学を卒業して、そのまま関西で就職をしたということだった。
頑張っていたんだが、つい最近就職先がM&Aの憂き目に遭い。
吸収された会社では旧会社の派閥は片隅に追いやられてしまって、出世の道は閉ざされてしまった。
結局は我慢ができずこっちに戻ってきたということだった。
どうやら俺と同じような生活を懲りずに送っていたようで、潤も同じく妻帯をしていなかった。
という話を、歓迎会の飲み屋の席で聞いて。
そこから先はよく覚えていない。
気がついたら、飲み屋の近所のビジネスホテルに居て。
ビールやら何やら買って、潤とふたりきりで部屋に入って。
キスを、してた。