第20章 こちらアラシノ引越センターの…②
「翔ー?どしたの?」
シャワーをしていた潤が帰ってきたのにも気づかなかった。
「あ、ごめん。呼んだ?」
「ううん。お次どうぞって言ってんのに返事なかったからさ」
なんで…こんなことになっているのか。
「あ…じゃあ、シャワー行ってくる…」
「どーぞ。俺、飲んでるからごゆっくり」
「ああ…うん…」
潤はバスローブのままベッドに座ると、さっき買って冷蔵庫に仕舞っていたビールの缶を取り出した。
「じゃあ、行ってくる」
「へーい」
◇
あれから、13年──
今日は、会社の歓迎会だった。
大学を卒業した俺は就職をしたものの、最近退職してしまった。
というのも、高校の時の潤みたいなことをしてしまって、居づらくなって退職する羽目に陥ってしまったのだ。
なんでああいうことをしてしまったのか、自分でも良くわからない。
でもどの女と付き合っても、なんだかしっくりこなくて。
それになんだか知らないけど、大学から俺はモテるようになった。
高校の時は1年のときまで身長が極端に低かったから、あまりモテた試しがなかったんだが。
だから、あのときの潤みたいにひっきりなしに女に告白されて、常に彼女がいるって状態が普通になってた。
だけど…どの女にも結局執着することができなくて。
社会人になってもとっかえひっかえしている内に、きがついたら課内の女の社員全員に手をつけてしまって。
女たちの無言のプレッシャーに、いたたまれなくなって退職したというわけだ。