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ヘブンズシュガーⅢ【気象系BL小説】

第20章 こちらアラシノ引越センターの…②


遠くで、昼休みの終わりを告げる予鈴が聞こえてる。

キスしてしまった俺達は、そのまま屋上の地面で座り込んで雲一つない青空を見上げてた。

「…翔、あのさ…」
「ん?」
「ごめん」

潤は俺の目をまっすぐに見て、謝ってきた。

「冷静になった?」
「うん…」
「まあ、俺もおちょくったから…ごめん…」
「いやっ…俺が…」

そこまでいって、潤は俺の顔を見て黙り込んだ。
目を逸らすと、三角パックのオレンジジュースを飲んだ。

「それ、俺の…」
「あ…」

気がついて、潤は照れくさそうに笑った。

「こんなとこでもキス…間接的にしちゃったな」


それが、高校生活で最も印象に残った潤の笑顔だった。





その後、俺は都内の大学に進学し、潤は関西のほうの大学に進んだ。

あのときの気まずさからか、潤から連絡が来ることはなかった。
大学を卒業しても、風の便りに潤が関西で就職したという噂を聞くだけで、本人からの連絡はなかった。

俺も、敢えて連絡をしようとはしなかった。


だって、あのときのキスが良かったから──


それを認めてしまうことは、当時の俺には崖から飛び降りるよりも勇気が要ることだった。


そう、あのときの俺には…
ひどく罪深いことのように思えて。

潤とのキスは、胸の奥にしまい込んでしまったんだ。

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