第19章 こちらアラシノ引越センターの…①
「そ、そんな、本人に聞ける訳…」
「聞けよ!これからは、全部俺に!本人に聞けよ!」
「え…えぇ…?ほ、本人に聞くの…?」
「一緒に住んでるんだからさ!」
そう言ったら、かざまぽんは俺を見たまま黙った。
「…いいの?」
「いいよ!聞けよ!」
なんか知らないけど、徳川さんや武蔵さんに俺のこと聞いてるかざまぽんを想像したら、嫌だった。
一緒にいるのに。
一緒に住んでるのに。
なんで俺が蚊帳の外になってんだよ。
「もしかして…バカ?いや、もしかしなくてもバカなのか…」
「なんでだよっ」
「ストレートの人に、バカ正直に聞けるわけないでしょうよ」
「そんなバカバカ言うなよ!傷つくだろ!」
かざまぽんの目がみるみる真っ赤になって。
「どんだけ失恋してきたと思ってんだよっ…そんな簡単に聞けるかよ!怖いんだよ!俺だって傷つくの怖いんだよっ…」
ガツンと頭を殴られたような衝撃が来た。
そうだ…そうだよな。
かざまぽんは、今までずっとゲイだからって。
ただそれだけで。
ずっと、傷ついて。
そうやって生きてきたんだ。
「傷…なんか、つけるかよ」
「…え?」
「傷つけねえって言ってるの!」
もう、なんかそれを想像したら、胸が一杯になってきて。
一人で傷ついているかざまぽん。
泣けてきた。