第19章 こちらアラシノ引越センターの…①
満開の桜はすごく綺麗で。
「そういえば、奥さんが出ていってからこうやってゆっくり桜なんて見る暇もなかったな」
ぼそっと呟いたつもりだったんだけど、一斉に3人が振り返った。
「あっ…ごめんね?気にしないで?単純に見てなかったなと思っただけだから!」
そうは言ったけど、3人はものすごく気の毒そうな目で俺を見る。
「ほ、ほら。離婚して仕事辞めて引っ越しして、それからすぐ就職活動してアラシノに再就職してだったから、春先なんか花見なんかゆっくりできないじゃん?」
「そうか…まあ、いいじゃないか。若い嫁さんが来たんだから」
徳川さんが真顔で変なことを言う。
「へ?」
「そうだぞ。40代で20代の嫁さんなんて羨ましいぞ?」
武蔵さんまでなにを言っているんだ。
「ほ?」
「なんだよ?俺じゃ不満だっていうのかよ」
徳川さんが更におかしなことを武蔵さんに言っている。
「は?誰もそんなこと言ってないだろ?」
武蔵さんも武蔵さんで、ツッコミとか入れないで真剣に返してる。
「へ?」
「もお、お二人共声が大きいです。ここ公共の場所なんで…」
冷静にかざまぽんが言うと、ふたりはニッコリ笑って肩を組んだ。
「いいだろ。羨ましいだろ、風間」
「悔しかったら、俺たちみたいになってみろ」
「悔しくないです」
「またまた~」
「またまた~」