第19章 こちらアラシノ引越センターの…①
「かざまぽーん?行くよー?」
「ちょっと待って。猫チャンたちのお水変えてから…」
繁忙期真っ最中。
いよいよ春めいてきた陽気に、桜の花が咲いてきた。
仕事中に通りかかった、深大寺の桜が綺麗だったからかざまぽんに言ったら、見に行こうかって話になって。
作業員はシフト制で休みを取るから、ふたりの休みが重なる日を待って、朝からでかける準備をしてた。
「じゃあ車のエンジンかけとくよー」
「頼んまーす」
ガチャっと玄関ドアを開けて、家の前のカーポートの車に乗り込もうとしたら、人影がある。
「ん?」
「あ、来た」
「よ!おはー!」
「ええっ!?支社長!?副支社長!?」
そこに立っていたのは、うちの引越センターの支社長徳川さんと副支社長武蔵さんだった。
仲良く二人で、車の前で立っている。
しかもスーツ。
「ど、ど、ど、どしたの!?」
「うわ、漫画みたいな驚き方…」
「おお…これが雅紀のキョドロキか」
「な、なんなの…コレ…」
家の中で笑い声が聞こえたから振り返ったら、かざまぽんがわるーい顔をしてすみれちゃんを抱っこしながら笑ってた。
「一緒に花見しにいきましょうよ。繁忙期で徳川さんも武蔵さんもお疲れだっていうから、誘ったんです」
「いやそうだろう!そうだろうよ!だが、言えよ一言!支社長と副支社長だぞ!キョドってオドロクだろうが!」
「ふふふ…稲葉さんのその顔が見たかったんだよ」
俺がどんな顔してるっつーんだよ!?