第19章 こちらアラシノ引越センターの…①
「稲葉さん!今、そんなに患者さんがいないそうなので急患で診てもらえるそうです。安全運転でお願いします!」
「ラジャー!」
そこから超安全運転で、動物病院に連れて行って。
体をキレイに拭いて温めたら、二匹とも元気になったから安心した。
同時に、あいつらに対しての怒りがふつふつと込み上げてきて。待合室で治療を待っている間、ぎりっと奥歯を噛み締めて我慢してるしかなかった。
「藤島のメリオの野郎…」
「え…?」
待合室の隣に座っているかざまぽんが、キョドった。
「なに?どうしたの?」
「藤島さんの名前って…メリオっていうんですか?」
「芽の里の男って書いて、めりおって言うんだよ」
「そんな読み方だったんだ…すごい名前。だからグレたんだ」
「グレ…まあ、そだけどさ。今どきのキラキラさんのほうが読み方わからないじゃん」
「いやそうですけど。メリオは俺だったらグレてると思います」
相変わらずニコリともしないで、きっぱり言い切るよなあ。
でもさっきのかざまぽんは、熱くて。
すごくいい子だなって見直しちゃったな。
「ねえ、かざまぽん」
「はい?」
「猫ちゃん、好きなの?」
「は?」
不機嫌そうな声とは裏腹に、かざまぽんは耳まで真っ赤になった。
「あらら」
「いや、猫チャンなんか好きじゃないっす」
「もう遅いよ?」
「むう」