第19章 こちらアラシノ引越センターの…①
慌ててふたりで営業車のキーを借りて、走った。
かざまぽんが梱包用のプラダンケース(プラスチックで出来たダンボールのケースだから保温性が高い)を持ってきてくれて、中にタオルを敷いてそこに子猫を寝かせた。
営業車の後ろに猫ちゃんを積むと、俺は運転席に乗り込んだ。
かざまぽんはそのまま後ろで子猫の箱を支えるみたい。
「どっか、動物病院知ってる!?」
「いつも出勤途中に見る動物病院なら。武蔵境通り沿いにある…あ、でも年末!」
「うわわわ…ちょっと営業してるか調べてくれる?俺も調べるから!」
スマホを取り出して「動物病院 営業中」と入力して調べてみたら、やっぱり最寄りはかざまぽんが言ってる動物病院みたい。
「あっ…大丈夫!営業中です!行きましょう、稲葉さん」
「よし!」
ポンと助手席にスマホを放り出すと、車を発進させた。
「かざまぽん、シートベルトして!」
「してます!」
さっすがだなあ。
俺だったら、忘れてそうだよ!
「稲葉さん、スピード今日やってそうだから、インターのあたり気をつけてください」
「わかったよ!ありがとう!」
慎重に揺れないように運転していたら、かざまぽんが電話を始めた。
なんと動物病院に連絡をいれてくれてる!
緊急なんです!って説明までしてくれてる…
なんか…
なんか、かざまぽんってこんな子だっけ?
25歳という若い子に珍しく、ちょっと老成した雰囲気っていうかさ。
ちょっと古い言い方だけど、白けてるっていうか。
全然なにもおもしろくなさそうな感じなのに…