第19章 こちらアラシノ引越センターの…①
慎重に紙袋の口にカッターを入れて、袋を開ける。
中からは、か細い鳴き声が聞こえてきた。
「…大丈夫だよ…大丈夫…」
そっと紙袋の中に手を伸ばしてそのふわふわの体を抱き上げた。
「わあ…黒の子猫だ…」
「かわいい…」
かざまぽんが目をキラキラさせて、猫ちゃんを見てる。
猫ちゃんはミャーミャーと小さな声で、でも精一杯生きる気力満々の声で鳴いてる。
やっぱりお尻にはちょっとうんちがついてたけど、自力でうんちできる月齢になってるってわかってよかった!
ちょちょっとトイレットペーパーでおしりを拭いたら、きれいになったし!
これなら、大丈夫そうかも!
「あの…こっちの袋も…?」
「あ、うん!そうなんだよ!そっちも」
そっちのおーちゃんが開けた袋の中には、グレーの長毛の子猫が居た。
二匹とも抱き上げると元気に鳴くが、動きが鈍い。
「やっぱ、病院連れて行かないと…」
「うん。そうしましょう」
猫ちゃんたちをタオルで包んで、事務所まで走った。
その途中で鬼の形相をした武蔵さんとおーちゃんが、営業のワゴン車で国道に出ていくのが見えた。
事務所に入ると、徳川さんが革靴を履いているとこだった。
タオルを抱えた俺とかざまぽんを不審げに見ている。
「ん?どうした?」
「と、徳川さんっ!猫ちゃん、元気ない!」
「ああっ…そうだった!すまん、雅紀!動物病院を調べて連れてってくれないか?」
「えっ!?いいの?」
「支社長の俺がいいって言ってるんだ。行ってくれ。風間も頼む!」
「はっ、はいっ!」