第18章 こちら、アラシノ引越センター!
「俺に礼なんか言ってないで、自分を褒めろよ」
「ええ~…でも俺、藤島に…」
言いかけて、思い出して寒気がした。
「藤島に?」
大野さんはビールを飲みながら、無邪気な顔で聞いてくる。
「…キスされたし…なんか実はずっと好きだったとかなんとか…拒否ったら押し倒されて…」
「えっ!?」
大野さんは絶句すると、ビールの缶をテーブルに置いた。
「ほ…他にはなんか…された、か?」
「乳首…触られた」
「えっ!?」
「それから……まあ、それを阻止できなかったんだから…だから俺、まだまだ…」
「んなことねえわ!」
大野さんは勢いよく立ち上がった。
それからテーブルに置いたビールの缶をまた手に取った。
「俺のこと助けてくれたんだから、それだけ覚えてればいいからな!?」
「え…?」
あまりの剣幕に呆然としていると、大野さんはぐびーっとビールを一気飲みして、缶をテーブルに叩きつけるように置いた。
「叩きのめしてくる」
「えっ!?」
「藤島の野郎ぉ…」
そのまま玄関へ行くから、後ろから羽交い締めにして止めた。
「待って!待ってって!大野さん!」
「離せっ…あと10発くらい殴ってやらなきゃ気が済まねえ」
どうしよう…止めなきゃ。
このまま行ったら、危ない気がした。
もしかして藤島が仲間集めてるかもしれないし。
危険だと本能が感じて、絶対に行かせたくなかった。
「…一人にしないでっ…」
「え…?」
大野さんの動きが止まった。
そして顔だけで俺を見上げた。
「俺…ひとりで怖いから…だから…行かないで…?」