第18章 こちら、アラシノ引越センター!
大野さんは微笑むと椅子に座る俺の前にしゃがみこんだ。
俺の震えてる手を見るとそっと両手で包み込んでくれた。
「藤島を気絶させたの、ニノだぞ?」
「うそ…俺が…?」
「うん。いいパンチだった」
全然覚えてない。
必死だったから、俺が何をしてどうなったかなんて全然わからない。
「ほんと…?」
大野さんはニッコリ笑うと、腫れ上がってる俺の左の拳を見せてくれた。
「俺のこと守ってくれてありがとうな、ニノ」
その大野さんの言葉を聞いて、震えが止まった。
「今まで、現場で鍛えた甲斐があったな」
「…うん…」
溢れてくる涙が邪魔で、拳が良く見えなくなってくる。
そう思っていたら、俺の手にタオルが載せられた。
「風呂、準備してくる」
大野さんが台所から出ていくと、途端に涙が止まらなくなった。
「うう~…」
タオルを口に当てて、漏れでる声を抑えようとしたけどだめだった。
お風呂を洗う水の音を聞きながら、わんわん泣いた。
こんなに泣いたの、子供の頃以来だ。
「ニノ…」
風呂から出てきた大野さんは、俺の顔を見ると苦笑いした。
「これじゃ…また鼻と喉が腫れて、風呂入れないな」
「うう~…」
ぽんぽんと俺の頭を撫でると、冷蔵庫からビールを2缶出してテーブルに置いた。
それからダイニングセットの椅子を向かい側から持ってくると、俺の近くに座った。
俺にビールの缶を握らせると、自分も1缶手に取った。
「ニノのパンチに、乾杯」
「か…かんぱぃ~ううう…」
キンキンに冷えたビールは、爽快に喉を通過していった。
そして俺の涙も、どっかに通過していった。
「大野さん…ありがとう…」