第18章 こちら、アラシノ引越センター!
どうせ大野さんは、一人じゃ動かない。
今の内容証明を送るのだって、相当面倒くさがってた。
だから俺が菊池に謝りに行くのに同行してもらう代わりに、大野さんの名誉毀損の訴訟を手伝えればいいなって。
そう思ってたんだ。
そう思っていたらドライヤーの音が止んだ。
コンセントを外すと、大野さんはドライヤーを洗面所に持っていった。
古いアパートの床がキシキシと音を立ててる。
「二ノー」
「んー?」
台所の奥にある洗面所の方から大野さんの声がした。
ベッドに座ったまま答えると、更にまた声がした。
「実家、一緒に行ってくれるかー?」
「……行くよ!行くに決まってる!」
へへ、せんきゅーって、小さな声が聞こえてきた。
「貯金取り返したら訴訟もやろうねー?」
それはめんどくせっ、だって。
「もお!大事なことなんだからね!?」
キシキシと床を踏む足音がしたと思ったら、大野さんが開いてたガラス戸から顔を出した。
「俺は、おまえが菊池って後輩に会いに行くことのほうが大事だよ」
目も合わさず、そんな事言う。
すぐにガラス戸の向こうに、顔は引っ込んでいった。
口下手なのは知ってるけど、なんでこういう時にこういうことスラっと言っちゃうかな…反応に困るじゃん。
「な、なに…言ってんの…」
ハハ…って、笑い声だけ台所から聞こえてきた。
ほんとにもう…敵わないなあ…
「ありがとう…大野さん…」
小さく聞こえないように呟いた感謝の言葉。
本当は一番伝えたい言葉だけど、まだ照れくさくて。
まだ大野さん以外の男の人は正直怖いけど。
でも大野さんが傍に居てくれたら平気で。
一緒に皆で馬鹿話することもできる。
どうして、大野さんだけは平気なのか。
そして他人のことを気にしている暇は正直ないのに、どうして大野さんのことには首を突っ込んでしまうのか。
あんなことがあって、もう一生…
誰にも触れることが出来ないと思っていたけど。
どうしてだろう
大野さん、あなたなら──
あなただから