第18章 こちら、アラシノ引越センター!
逆恨みから暴力を振るわれたとしか、言ってなかった。
それが大きなトラウマになったと言ってあったから、今まで大野さんは特別にその事件のことは聞いてこなかったんだけど…
さっき言ったことは、当然この質問が来ることが予想されることで。
覚悟は、してた。
ごくりと唾を飲み込むと、大野さんの包んでくれた手を見つめた。
軽蔑…されないかな…
「武井は…その…」
静かに、大野さんは聞いてくれてる。
自分の手のひらから汗が吹き出てるのがわかる。
大野さんの手に汗ついちゃうな、とぼんやり思った。
「ゲイだったんだ……」
あの時、殴られた衝撃で脳震盪を起こしていたみたくて、徐々に力が入らなくなって抵抗が難しくなっていった。
それに武井ほど体力もなかったから、成すすべもなく俺は脱力して無抵抗になってしまった。
そんな俺を武井は好きにした。
もう何をされているのかもよくわからなくて。
気がついたら、武井が俺の隣に倒れていて。
家の狭い玄関には菊池が立っていた。
俺と目が合うと玄関ドアを慌てて閉めて、更に鍵を締めた。
振り返った菊池は頭から血を流して、泣いていた。
ああ…怪我をさせてしまったな…
申し訳ないことをしてしまった
そう思っていたら、菊池は俺の体にスーツのジャケットを掛けてくれた。
なんでそんなことをしてくれるのか、よくわからなかった。