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ヘブンズシュガーⅢ【気象系BL小説】

第5章 約束


「ああ…そうだな…」

俺を見ないまま、どんどん智はバッグに荷物を詰め込んでる。

「こんな最低なやつ、別れたほうがいいだろ?」

そう投げやりに言うと、バッグのファスナーを閉めた。
今度はキャリーケースを押し入れから出して、床に広げた。

「待ってよっ…俺、まだ別れるって言ってないっ…」

止まらない智の腕を掴んだ。

「ちゃんと話して…」
「和也…」
「ちゃんと俺の目を見て」

暫く沈黙があった。
掴んだ智の腕は、やっぱり震えてて…


どうして…
なんで…

なんで俺は気づかなかったんだろう


「…智…?」

名前を呼ぶと、ゆっくりと智は顔を上げた。
まっすぐに俺の目を見つめると、口を開いた。

「子供が欲しい」
「…え…?」
「だから、女と結婚する」

頭の中が、真っ白になった。



「かずな…」


その唇が、好きだった

きれいな形の唇が、俺の肌の上を滑っていく感触が好きだった

そこから漏れる吐息も

声も

全部…全部…



「ぐっ…」



その唇から漏れる苦悶の声



「許さない…」



俺のこと「愛してる」って言ったその唇から出る声



「許さない…智…」



苦しそうに歪む顔から、目が離せなかった



「かずな…り…」



絞り出される声は、もう俺には聞こえない



聞こえなくなる



だから








消してあげる
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