第18章 こちら、アラシノ引越センター!
『…いえ、そういうことじゃ…』
『じゃあどういうことなの?』
『…あの、これは僕が今やってる案件で…武井さんから言われた分じゃ…』
そう言うと、武井さんはこちらに顔を向けた。
笑顔なのに目が笑ってなかった。
『わかってるよ?そんなこと。だからグラデーションね?』
『…ご相談をさせていただきたかったんです』
『だからグラデーションにしてって言ったでしょ』
『だから相談…』
『俺はグラデーションがいいの』
言葉が通じない。
しかもこの人、ニヤニヤ笑ってる。
…絶対わざとだ。
そう思ったら、すっ飛んでいった思考が戻ってきた。
『…わかりました。主任にも相談してみます』
やっと指導係から離れて独りで仕事を任せて貰えたのに、なんだかこういう言い方をされて悔しかった。
『オイ!なんでそうなるんだよっ…』
武井さんは俺の左腕を掴むとねじりあげるようにした。
手に持っていたタブレットが、鈍い音を立てて床に落ちた。
『痛っ…』
『なんで主任なんだよ!指導係の俺の言う事は聞けないってことなのかよ!?』
そこでもみ合いになったんだけど、武井さんの俺の腕を掴む力はすごく強くて。
そういえば武井さんは学生時代は十種競技の選手だって言ってた。
俺は運動なんて小学生の時の野球くらいしかしてないから、全く敵わなかった。
「おい!武井!何してる!」
「二宮くんっ…どうしたの!?」
人が止めに来るまで武井さんは俺の手をひねり上げてた。