第18章 こちら、アラシノ引越センター!
会社に最寄りの駅に着くと、ちょっとだけ歩く。
降りたときは人は居るんだが、郊外の各駅停車の駅だから、オフィスや商店街がなくてあまり一緒の方向に歩く人はいない。
駅から会社までは、駅前の細い通りを大きな国道に向かってまっすぐ歩いていく。
引越センターの人は、原付とか車で通う人が多いからこんなとこ歩いてるのは俺くらいで。
その間に旧道を1本挟んでいるから、少しだけ距離がある。
会社は国道に出てすぐだ。
その距離を、ほぼ毎日てくてくと一人で歩いている。
本当は一人暮らしの家の近くにもここの支社があるんだけど、ちょっとだけ遠くに行ってみたくて。
誰も…俺のことしらないとこがよかった。
だからわざわざ力仕事を選んで、なおかつ都心とは逆方向の電車に乗って、バイトに通ってる。
最初のうちはバイト終わりにへばってしまって家にたどり着くのも大変だったけど。最近じゃそれも苦にもならなくなってきた。
「……」
信号待ちで、腕を曲げて力こぶを触ってみる。
「…だめだぁ…」
やっぱり、筋肉はついてない。
体力はついたのかもしれないけど、腕力は一向に強くなった実感はなかった。
だから頭を使って、力が必要ない作業を率先してやってみてるけど…
『これじゃあ二人作業の現場になったら、役に立たねーぞ』
そうこの前、一緒に組んだ契約社員さんに吐き捨てられてしまって…
ヒリヒリと、胸が痛くなる。
開いてしまった古傷にオキシドールを刷り込まれてるような痛み。
胸を押さえようとしたその時、
「おう!ニノちゃんじゃねえの?」
突然、背中のリュックを掴まれた。
「えっ…えっ…」
ぐいっと上に引っ張り上げられるような格好になって、ちょっと足が浮いてしまった。
「や、やめて…」