第18章 こちら、アラシノ引越センター!
稲葉さんが俺から目を逸らさないから、ロッカー前で動けなくなってしまった。
「え…と、その…」
「なになに?見られてると着替えらんない系?」
「いえ、まったくそんなことはないですけど」
「うっひょ、さすがおーちゃん!」
「おーちゃん…」
おーちゃんなんて呼ばれたこと無い。
今までは名前か苗字か…
こんなあだ名みたいなのつけられたことなんてなかった。
「え?おーちゃん呼び嫌だった?」
「え…あ、全然」
「そ?じゃ、おーちゃんって呼んでもいい?」
普通呼ぶ前に確認するんじゃないか…
って、俺もニノのことニノって呼んでから許可もらったか。
「もう、全然呼んでください」
「へへ…ありがと」
にっこり笑うと、目尻にいっぱいシワが寄った。
笑顔、なんだか眩しい。
世間ではこういう人を好青年と言うんだろうな。
年上だけどなんだか可愛らしい人だ。
「ごめんごめん、見ないから着替えて?」
そう言うと、スマホに目を落とした。
「あ、はい…」
この人、以前はバイトの取りまとめ役だったって聞いた。
中途入社だからまだ社歴は短いけど、もう40の大台に乗っているらしく、『責任ある役目』を任せてみようってことだったらしいんだけど…
一生懸命やっていて、バイトの間でも評判は悪くなかったらしい。
でもボロボロとバイトたちが辞めていくから、一時期は落ち込んで仕事に支障をきたすようになったから、その役目は一時的に今の人に移されてると、昨日西川班長が言ってた。