第18章 こちら、アラシノ引越センター!
会社に着くと駐車場でアルファードを降りた。
「じゃあ、大野くん。よろしくね」
武蔵さんが特上の笑顔で握手を求めてきた。
よろしくってなにがだろう。
今日一日、よろしくってことだよな?
「あ、はい…」
差し出された手を握ると、武蔵さんは徳川さんを見た。
にやりと徳川さんが笑った。
「今日もがんばろう」
徳川さんと武蔵さんは仲良さそうに、トレンチコートの肩を並べて事務所のほうに歩いていった。
「よ、よろしくお願いします!」
なんとかそう言うと、徳川さんはこちらを見ずに手だけ振ってくれた。
「よ、よかった…返事しそびれるとこだった…」
ふと見ると駐車場で屯していた作業員たちが数人こっちをみていたけど、別に声も掛けられなかったからそのままロッカー室まで歩いた。
「あたまいてー…」
余りのことに忘れていたけど、二日酔いだった。
「おはようございます」
ロッカー室に入ると、数人の作業員がガヤガヤと入れ替わりで出ていってしまった。
「おはよう、おーちゃん」
「わっ」
人が残っていると思ってなくて油断した。
ロッカー室の真ん中に置いてあるベンチに一人。
社員の稲葉さんが座ってた。
「お、おはようございます…」
「おう!」
いきなり俺のことおーちゃん呼び…?
まだ一回もこの人と一緒に作業したことないんだけどな…
「二日酔い?」
「あ、ええ…でもなんか吹っ飛びそうです」
「なんかあったの?」
「あ。いえ別にないんですけど…ね」
ベンチに腰掛けたまま、稲葉さんは俺のこと見上げている。
すでに作業服に着替えは済ませていて、手にはスマホを持っている。