第18章 こちら、アラシノ引越センター!
「おっす、野瀬。ここいい?」
「どぞどぞ」
事務員の北島さん(42歳)が私の陣取るテーブルに来た。
「なにみてんの?」
「今、話題のボーイたちを」
「ボーイて…おまえいくつだよ」
「女性に年は聞かないもんですよ」
「あ、しまった。ハラスメント?」
「ハラスメント」
私はそうでもないけど。
嫌がる女性の方が多いようだから、アウト。
「ああ…えっと、大野くんと二宮くん?」
「ええ。班長と一緒に来ましたよ」
「まーた西川さん、甲州屋に連れて行ったな」
テーブルに置いてあった、冷え切ったおしぼりの袋を破ると顔を真っ先に拭いた。
「おっさんやんけ」
「ああ~、なんもいえね!」
「言っとるやんけ」
北島さんはゴシゴシと顔を拭き終わると、後方の席に並んで座るボーイたちをこっそりと見た。
「…甲州屋で、親睦深めてきたな」
「そうみたいですね」
いい顔して、笑っている。
今までみたこともないような、リラックスした顔。
「西川さん、さすがだなあ…」
「ですね。年の功」
別のテーブルで盛り上がっている西川さんを見ると、北島さんは肩を竦めた。
「俺より年上なのに、まだ現場の最前線にいるんだもん。尊敬しかねーよ」
「…上手く、いくといいですね」
そう言うと、北島さんは真顔になった。
「まあ…俺が作業員やってたころも、あったからなあ…ああいうの。隠れてやるから、根絶は難しいかもな」