第18章 こちら、アラシノ引越センター!
大野さんと二宮さんは、副班長である武田さん(50歳)に、他の作業員から暴力をふるわれているという勇気ある告発をしてくれた。
最近、バイトの離職率が高くて悩ましいところだったから、やっと原因がわかったって感じだった。
それに日雇いの派遣会社も、人を出してくれなくなった。
繁忙の日だけ頼むのだが、以前はもっとすんなりと人を出してくれていたのに、出し渋るようになったのだ。
担当の冴えないおじさんはごにょごにょと言うばかりで、要領を得なかったのだが…
大野さんと二宮さんの話で、だいたいの全貌が見えてきた。
「難しいですか…根絶…」
「なかなかなあ。子供のいじめがなくならないのと一緒だよ。締め付けると、余計に陰でやるようになるからやり方を間違っちゃいけない」
いい大人なのに…
そう思っていたら、一段とにぎやかな筋肉軍団が店に入ってきた。
「いよー!盛り上がってる?まだ開始してないよね?」
マイスター社員の児島さん(51歳)とその仲良しオジサン軍団だ。
にぎやかな店内が一層、騒がしくなった。
「…みんなああいう底抜けにいい人ばっかりだったらいいんだけどね」
「そうですね」
北島さんは、ためいきをついた。
「支社長が抜き打ち視察やるって言ってた」
「ええ…?」
「こっそり現場に行って、視察するんだと」
「もしかして、まずは証拠押さえから…?」
「…まあ、悪質なアイツんとこを重点的に見るみたいだよ」
「そうですか…」
悪質というのは、私達の真横にいる集団の契約社員の作業員…藤島 芽里男(36歳)という人だ。
さっきから、その真向かいにいる副班長の武田さんが冷ややかに彼を見ているのに気づいた。
もうがっつり、上の人達には目をつけられてるんだな…
「ああ。ぐうの音も出ないようにしてやる」
「そこは、なんも言えなくしてやるでしょうが」
「あ?」