第18章 こちら、アラシノ引越センター!
俺にもっと、腕力があったら…
前の職場で、あんなことにはなってなかったのかも知れない。
それを克服しようと、わざとアラシノ引越センターに入ってみたけど。
腕力が付くどころか、自分の不甲斐なさを痛感するばかりの毎日だった。
この前だって、児島さんと大野さんに迷惑かけてしまったし…
「すいません…」
「なんで謝るんだよ…最初はみんなそんなもんだって。俺も西川さんも、最初バイトで入ったときなんて、ガリガリだったんだから」
「ええっ…」
ふたりとも、服の上からでもわかるほどのマッチョで。
ガリガリな姿なんて想像もできなかった。
「児島くんなんて…泣きながら電子レンジ運んでたよ?」
「えっ…ええええ…」
「腕抜ける~って、泣きながら走ってたわ」
「ほ、ほんとですか…?」
武田さんはにやりとわらって、人差し指を口に当てた。
「これ秘密なんだけどさ。実は児島くんって、俺より一個年が上なんだけどさ。後から入ってきたから、それ知らないんだ。今でも俺のほうが年上だと思って敬語使ってくるの。面白いから黙ってんの」
「えっ!?」
ひゃひゃひゃひゃひゃと武田さんは笑った。
「まあ、オレ副班だから偉いっちゃ偉いけど、あっちだってマイスターだし年もあんま変わらないんだから敬語なんかいらないんだけどさ」
ハンドルを握ったままキャップを取ると、ボリボリと頭を掻いた。
「でも入ってきた時、かなりビシバシやったからさ。だから今でも俺のこと怖いみたい。…児島くん、まじで事務所の休憩室で動けなくなってたこともあったな…くっくっく…アレ面白かったなあ…」
「え、ええ…」
おも…しろいのかな…それ。
明日は我が身で、全然笑えなかった。
「だから、最初はそんなもんなんだから、気にすんなよ?」
そう言って少しふふっと笑うけど、すぐ真顔になった。
「殴るやつが、いけない」
こ、こわ…
普段、柔和な人が怒ると、マジで怖い。
武田さん、顔が整っているから、迫力があって余計に怒ると怖い…
次の現場を終えると、支社に戻った。
荷台から処分品を降ろして、材を片付けると、武田さんは缶コーヒーを奢ってくれた。
「まあ、もうちょい待って。ちゃんと対策するからさ」