第18章 こちら、アラシノ引越センター!
その日の作業は、大野さんと一緒だった。
朝礼とラジオ体操を終えると、1.5トントラックの前に集合した。
「おー、今日は大野くんとニノちゃんかあ…」
キャップをゆるく被りジャンパーを肩に羽織って現れたのは、副班長の武田さんだった。
デッキシューズの踵を踏んでるから、草履みたいな音を立てて歩いてきた。
「初めてだね。よろしくぅ~」
「よろしくおねがいします」
「よろしくねがいしまっす」
ペコリと頭を下げると、武田さんはにっこり笑った。
冬なのに半袖Tシャツの二の腕の筋肉がめきっと動いた。
「すげ…」
思わずといった大野さんのつぶやきが聞こえた。
激しく同意。
俺たちはまだ新人だから、一番小さいトラックの作業を割り当てられる。
一緒に作業するリーダーは、ベテランさんだ。
仕事を教えながら作業するから。
それに小さいトラックの案件だと、荷物数が少ないし貴重品を運ぶことも少ない。
新人に仕事を教えるにはちょうどいいってことだ。
「じゃあ、始めよっか」
よかった…今日は、殴られなくて済むかな。
武田さんはお酒を飲んでもさほど変わらない酒豪だったし、普段から物腰も柔らかで、明るい人だった。
たしか、筋肉のために酒は飲まないって聞いたことがある。
ちょとマッスルオタクっていうか…変態っていうか…
だから乱暴なことは筋肉のためにもしないんだろう。
そう思ってたら、大野さんも同じこと思ってたみたく。
ほっと息を吐き出していた。
思わず目を合わすと、ちょっとだけ笑いかけてくれた。
…貴重な笑顔…
「今日は、養生しっかりしなきゃいけないとこだから、材(ざい)ちょっと多めに積んでね」