第18章 こちら、アラシノ引越センター!
「ふたりとも、仕事慣れたか?」
児島さんは優しいから、運転中でも話しかけてくれる。
1.5トンのトラックは、国道を都心に向かって走っている。
運転は現場リーダーがしなければいけない決まりだから、俺たちバイトは助手席に座ってるだけで、いつも寝そうになって困る。
「はあ…」
ちらっと隣に座る、同じバイトの二宮くんを見たら、ちょっと困惑してる。
やっぱ…まだ慣れないよなあ…
人のことは言えないけど、二宮くん見るからにガテン系なんて初めてそうなんだもん…色白だし、女子みたいに細っこいし。
「まあ、まだ入ったばっかだから大変だろうけどさ…これから繁忙期だし、まじで頼むよ?時給アップするしさ」
「はあ…」
俺のほうが二宮くんよりもちょっと先に入社してる。
でも現場が一緒になったのは今日が始めてだ。
毎日、組まされる人は変わるから、人の顔と名前を覚えるのが苦手な俺には、ちょっと苦痛ではあった。
でも、仕事を辞めたばかりで…
すぐに俺にできそうな仕事なんて、これくらいしかなかった。
再就職活動をしながらだから、休みも気軽に貰えないといけなかったし。
無職のまま、失業保険貰いながらで就活するのでも良かったんだけど…
一人で部屋にいると滅入ってきて、だめだった。
しょうがないなと割り切ってはいる。