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ヘブンズシュガーⅢ【気象系BL小説】

第17章 上総介の場合


「知りたかったんだろ…?」

なにが悪いのかまるで理解できないという声だ。
闇のなかを、移動していく。
どうやら一処には留まっていないようだ。

「なにい…?」
「水野の殿サンに銭、預けといてよね」

やはり銭金か。
これだから忍びは。

「おいら無門だからな」

言うつもりはないっていうことか。

「…ああ、もうわかったから失せろ!」

ちょうど銭の持ち合わせが鐚一文なかったから、コイツにはなにも呉れてやれん。

「なんだよ…偉そうな殿サンだなあ…」
「なんだと!?殿なんだから偉そうで当たり前だろう!?」
「なんだよ。俺、多分先輩だぜぇ?」
「なんのだよ!?」

少しの間が空いた。
彼奴め、移動したようだ。

「あの白兎だよ」
「俺の白兎のことか!?」

途端にパチリと音がして、ろうそくに明かりが灯った。
部屋の中が薄明るくなると、にやにやした顔の忍びが俺を見上げていた。

しまった!

思ったときには遅かった。
俺の驚いた顔を見ると、一層嬉しそうににやにやと笑う。

「ふうん。やっぱりな」

こんな忍びに俺の白兎の事を知られてしまっているとは。
なんとしたことだ。

「せ…先輩とはなんのことだ」

ここから形勢を逆転できるかは、わからん。
しかし何か言っていないと、背中を流れる汗が止まりそうになかった。

それをこの忍びに知られるのも癪であった。

しかし先輩というのは一体なんのことを言っているんだ。
皆目見当もつかなかった。

「先輩ったら先輩なんだよ…白兎歴なら俺のほうが長いんだからな?」
「は…?何を言ってるんだ?俺が白兎と出会ったのは、奴が6歳の頃ぞ?」
「ふふん。甘いね。俺なんかアイツが5歳の頃には…」
「おまえ何歳なんだよっ」
「俺か…真剣に年なぞわからん」

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