第16章 BOY【O side】EP.9
「…ば…っきゃ~ろ~…なめんな…」
思わず、あん時のこと思い出して声が出た。
そうだよ…俺に愛人なんて稼業できるかっつーの…
今ならはっきりわかる。
俺にはただあいつのこと待ってる生活なんて、できやしない。
それはあいつもよくわかってたんだ。
だから…連れていく行くっていう選択肢は、最初からなかったんだ。
「なに?智…寝言…?」
「びっくりしたあ…え?起きてるんじゃないの…?」
「いや、寝てるね。またよだれ出てる…」
翔の声が聞こえたら、また口元を誰かがティッシュで拭っていった。
「でも、別れるとき…ね…」
雅紀がウキウキしながら、まだ暴露話を続けているようだった。
どんくらい意識飛ばしてたんだろ…
そろそろ起きるか…
「そっか…そうだよね…今ここにいるんだから、別れたんだ…」
「ふふふ…なんか、ドラマとか映画の話みたいだもんね。このおっさんの話になんて思えないよねえ…?」
おい。おまえもおっさんなんだからな!?
「うん…」
「もお、ニノちゃんたら…そんな顔しないのっ」
「…だって…智、そんなに好きだったのに…」
「今は、ここにいるみーんなが、智の恋人なんだから…」
「うん…」
「王子のお陰なんだよ?」
「え?」
「王子がね…国に帰るとき、智に財産を残していったんだって…それが、ドバイ郊外の土地で…」
「え…ドバイ…?」
ふふふ…と雅紀が笑った。
「その土地、石油が出たんだよ」
「えっ!?」
「もうねえ…びっくりだよねえ…」