第16章 BOY【O side】EP.9
「それで…ドバイで一緒に暮らしてたの…?」
「そうみたい。俺もそこまで詳しくは、智から聞いてないけど…オーストラリアで出会って…口説かれて、恋に落ちて…んで、なぜかドバイで同棲始めたんだって」
「ちょ、ちょっと俺には想像ができない…」
「そうだよねえ…突然こんなこと言われても、頭イカれてるとしか思えないよねえ…」
ばーか…全部ほんとだっつーの。ほんと。
”サトシ…サトシノ目は、宇宙ノヨウデス…”
おまえも…うるさいよ…
しかもなんで宇宙なんだよ…普通、宝石とかだろ?
…今更、俺の夢になんか出てくるなよ…
幸せに暮らしてんの、知ってんだぞ?
テレビ見てたら、勝手に知っちまうんだからな?
時が来るのは…わかってた。
あっちは絶対に、男の恋人となんか一生居られるわけないんだ。
なんたって王族なんだからな。
全世界的にカミングアウトなんかしたら、とんでもねーことになっちまうのは、目に見えてた…宗教上の理由で、絶対に許されないから。
だから…結婚するまで…ほんのひとときの関係だっていうのは
よくわかってた
知らない世界をいっぱい見せてもらって。
したことのない贅沢をいっぱいさせてもらって。
たくさん知らないことを教えてもらった。
だから…せめて、このひととき。
あいつの役に立つことがしたいって、思ったんだ。
あいつが、王族に戻っていくそれまでの時間を…
最後の自由な時間を、最高に楽しく過ごさせてやろうって。
でも…やっぱり俺は、ただの中卒で。
あいつの役に立つことなんて、できなかった。
勉強…しとけばよかった…
もっと頑張って勉強しておけば…
もっと高い学歴があったら…
もしかして、俺のこと本国に連れて行ったかもしれない。
あいつが国に帰ってから、たくさんいた執事の中のひとりから、そう聞いた。