第16章 BOY【O side】EP.9
なんだなんだ…三匹の子豚ちゃんかあ?
そう思ってボケっと突っ立って見てたら、翔がこちらを見た。
「あの…智…?」
「ん?」
ダッフルコートのポケットからなにか取り出した。
「もしかして、これって…智?」
古い新聞の切り抜きだった。
「なにこれ?」
潤が覗き込むと、和也も一緒になって翔の手元を覗き込んだ。
「しめじのかやくご飯…のレシピ?」
「うん…亡くなった母さんが、レシピとか、役に立ちそうな記事をこうやって取っておく癖があって…」
「え…これ、お母さんの遺品なの?」
和也が目を丸くした。
「うん…いつかは整理しなきゃって思いながら、できなくて…で、最近暇ができたから整理してた中にこれがあって…」
ぺらっとその切り抜きの裏を見せた。
「あ……」
それは…一回だけ、海外で出た釣りの大会で一等になったときの記事だった。
魚を持っている顔写真が載ってて、でも本文は切れてるけど、日本人が快挙!みたいな小さな記事の切れ端だった。
「えっ…!?智じゃん!?」
「ずいぶん若い…」
「なになに?どしたの?」
雅紀もエプロンで手を拭きながら、こっちに寄ってきた。
「…智って、ドバイに住んでたの…?」
「あ、ああ…これ、あの頃のかあ…」
「あの頃?」