第16章 BOY【O side】EP.9
きゅっと口を結ぶと、じっと潤の顔を見た。
睨むように、見てる。
「…おまえも、かっこ悪い」
ぐっと潤の体に、力が入った。
「もし…どうしようもない事情で、あんな仕事してたんだったら、ごめん。でも…話を聞くと、松本は逃げなかったんだよね?本当は、逃げること…できたんだよね?」
「……」
潤は答えなかった。
でも、和也は辛抱強く答えを待った。
やがて潤は、ひとつだけ頷いた。
「……どうでも…よかったんだ…」
「…うん…」
「俺…男なのに…男にヤラれて…」
「うん…うん…」
「初めてなのに、気持ちよかった…」
「…うん…」
「俺、異常だって…普通じゃないって…だから、俺…なんて…もう、どうなっても…いいって…そう…思った…」
左手で、潤は自分の目を覆った。
「も…もう、俺…何人にも、輪姦されて…もう、女の体見ても、勃たない…もう、俺…だから…あんなビデオ出て、痛めつけられて…死ねばいいと思った…」
目を手で覆ったまま、潤は上を向いた。
「でも、誰も俺を殺してくれなかったっ…だからっ…あいつが綺麗に死ねる薬、くれるっていうからっ…だからっ…」
「松本っ…」
和也が立ち上がって、潤を抱きしめた。
「首…吊ったら、内臓がケツから出るって…硫化水素も凄く苦しいって…練炭だって溺れたみたいに苦しいってっ…だからっ…死ぬときくらいはっ…綺麗に死にたかったっ…」