第16章 BOY【O side】EP.9
潤が和也と目を合わせた。
和也の目の涙は、溢れ出して。
一本の筋になって、頬を伝った。
「俺も…そんなときがあったよ。ちょうど、去年の9月…松本と話したとき、そうだったと思う」
「去年の…9月…」
「初めて、ちゃんと二人で話したろ?だから、俺凄く覚えてる。ちゃんと、覚えてるよ」
「…うん…」
ぎゅっと、両手で潤の手を握った。
「でもさ…この家に来て…この人達に大事にしてもらったんだ…そしたら気づいたんだよ…」
和也は、潤の後ろにいる俺を見た。
「俺ね…俺だけじゃない。俺の親も。全然、俺のこと大事にしてなかったなって…だから、自分のことなんか、どうでもいいって…そう思ってたのが、わかった」
また一粒、涙が頬を伝っていった。
和也は視線を潤に向けた。
「一ヶ月…寝込んだんだよ…?」
「え…?」
「俺。俺が寝込んだの。まあ松本も…一ヶ月寝てたようなもんだけどさ…」
ふふっとちょっと笑って。
でもすぐ、真顔に戻った。
「あんな仕事してさ…金稼ぐことなんて、別になんとも思ってなかったのにさ…おっかしいだろ?かっこ悪いだろ?」
小さく潤は、首を振った。
「そんなこと…ない…」
「ありがと…でもさ、俺、かっこ悪かったよ…」