第16章 BOY【O side】EP.9
「にの…みや…」
潤が、かすれた声で和也を呼んだ。
それから、ワイシャツに学校指定のズボンの制服姿である和也を、眩しそうに見ている。
「松本…?」
和也はごく自然に、潤の頬を手で包んだ。
「大丈夫だよ。ごめんね?智じゃ頼りなかったでしょ」
そう優しい声で語りかけると、ぐっと潤の体に力が入った。
「お腹すいてない?ご飯いまから、用意するからね?」
このひと月…ろくに返事もしない潤に、和也はずっとこうやって話しかけてた。
まだ正気に戻ったってわかってないから、いつも通りに話しかけてる。
「二宮…ごめん…」
和也が目を見開いた。
すぐに俺の顔を見た。
頷いてやると、ちょっと戸惑った顔をして。
頬を包んでいた手を引っ込めた。
「潤、起きよう」
顔を隠そうとする潤を無理やり起き上がらせて。
雅紀と和也は、それをじっと見てる。
なんとかベッドに座らせると、雅紀が部屋の電気をつけた。
それからカーテンを閉めて、こちらを振り返った。
俺と目が合うと、かすかに頷いて。
立ち尽くしてる和也の後ろに回ると、しっかりと両肩を掴んだ。
「ニノちゃん…ふたりで話す?」
「え…?」
「俺達が居たら、話しにくいかな?松本くん」
そう雅紀が言うと、潤は顔を上げて。
ゆっくりと首を横に振った。