第16章 BOY【O side】EP.9
「え…?」
「うち…はな。ゲイ向けのイメージビデオを作ってる会社なんだ」
理解できないって顔してるが、しょうがない。
とにかく話してしまうしかない。
「だから、資料として他の制作会社が作ってるのを買ってくるんだよ。そのなかに…最近発売された、おまえが主演のもあったんだよ」
「…二宮、見たの…?」
「中身は、見てない。パッケージだけで内容が想像できるものだったし…」
「そ…っか…」
雅紀と俺は見たんだけどな。
なるべくマイルドなシーンで、潤の顔が鮮明にわかるのを選んで、キャプチャーしてプリントアウトして。
本当に松本くんなのか、和也に確認させてたから。
見るに堪えない、陵辱系だった。
潤は膝頭に顔を埋めると、しばらく黙った。
「…言いたくなかったらいいけど…」
そう前置きしてから、ぽんと潤の頭に手を置いた。
「なんであんな仕事してたんだ…?」
「……」
だんまりか…
「言いたくないんならいいんだ。でも、白石ってやつの借金な…おまえが肩代わりしてた分は、もう気にしないでいいから」
潤は顔を上げた。
やっぱり、理解できないって顔してる。
「…どういうこと…?」
「契約書も、取り返したよ。サインしたの覚えてるだろ?」