第16章 BOY【O side】EP.9
「潤…?」
呼びかけると、顔を上げた。
俺のこと、わかってるのかな…
「俺の名前は、智だよ。わかってる?」
「…うん…なんとなく…」
「じゃあ、雅紀は?」
「ご飯、くれる人…」
「和也は?」
「二宮は…クラスメイト…だった…」
「よし」
体を起こして、ソファの上であぐらをかいた。
丸まってる潤と向き合って、とことん話してみようと思った。
「何でも聞いていいよ?なんかわかんないこと、ある?」
「え…えっと…」
上目遣いで見てたけど、潤も体を起こした。
ソファの上で膝を抱えて座ると、俺の目をじっと見た。
ああ…ちゃんとこうやって人をまっすぐに見ることができる奴なんだなあ…だから、和也…
「お…俺…夢、かと思ってて…」
「おん」
「でも、手、見たら傷残ってて…これ、夢じゃないんだって…」
「おん…ちなみに、その手の傷はひと月前についた。撮影で。覚えてるか?」
こくんと頷いた。
「…どんな撮影だったかも?」
また、こくんと頷いた。
「それが発売されてることも、知ってる?」
小さく頷くと、ため息をついた。
「…二宮も…知ってるってこと、だよね…?」
「そうだな…ビデオのパッケージ見て、おまえだって気づいたの、和也だからな」