第16章 BOY【O side】EP.9
今まで何度も、そういう奴らがこっちの世界に落っこちてきて…
自分で自分を痛めつけるみたいに、ヤケクソになって顔出しのAVなんか出て…最後には浮浪者みたいになってたり…
体を縛られないと感じないとか、誰か見てないと感じないとかさ…凄く特殊な世界に迷い込んで、自ら堕ちていくのを、どうしようもなく見ていた。
俺だって…
あいつと出会ってなかったら、どうなっていたか
このまま快楽に溺れて、クスリとかに手を出して…
実際この界隈じゃ、そういう誘惑は多かった。
もしも、その誘いに乗っていたら、俺だってどーしょーもないことになってたかもしれない。
もう、遠い昔に俺のこと愛してくれた人。
俺が愛した…あいつ。
愛するってことが、どういうことで…
愛されるってことが、どういうことだか教えられた。
あいつのお陰で…俺は生きてる。
だから、こんなことしてる。
自分は自分だって認めて…自由になれば。
誰だって、幸せになれる。
それが例え、ゲイだってね。
人を愛することだって、愛されることだって。
自分に制限をかけなければ、できるんだ。
自分で自分に足枷をつけなければ…
その、手伝いを。
ほんのちょっと、手伝いをしてるんだ。
「ん…」
潤が、少し体を捩った。
ふと見ると、すごい汗をかいてる。
「潤…?どうした?」