第16章 BOY【O side】EP.9
ボーッと座ってる潤の唇に、人差し指で触れた。
何度かトントンと叩いてから、自分で水を口に含んで潤に口移ししてやった。
雅紀にも、遠い昔…こうやって水を飲ませた。
自分で絶対に飲まないから、無理やりこうやって飲ませてたんだよな。
潤も何度かこうしてるから、今日は素直に水を飲み込んだ。
「よし、いい子」
そう言って頭を撫でてやると、少し気持ちよさそうな顔をした。
「ふうん…」
太い眉に、まつげがバサバサと女みたいな目をしていて…
一歩間違えたら、外人みたいに見える。
だけど、笑うと案外可愛いんだよな…
まだひと月前の傷跡は、ところどころ残ってて痛々しいけど。顔は幸い、綺麗に治ってる。
「本当におまえ、猫なのかよ…」
やっと、俺に慣れてきてくれたのかと思うと、ちょっと嬉しい。
水を何度も飲ませてから、ソファに横になる潤の後ろに潜り込んで、俺も寝っ転がった。
最初のうちは逃げようとするけど、ぎゅっと抱きしめていると、そのうち諦める。
「お?」
今日はなんと…くるりと向きを変えて、俺の方を向いてくれたではないか。
「どうした?潤」
「……」
そう聞いても、当然何も答えない。
でも、その変化が嬉しかった。