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ヘブンズシュガーⅢ【気象系BL小説】

第16章 BOY【O side】EP.9


「…いつも通りにしてたの…?その時…」
「そうだな。俺、医者じゃねえし…そのうち、手に負えなくなったら病院にぶちこんでやりゃいいかって思ってさ…」
「んな、いい加減な…」
「なんだろな…雅紀の目見てたら、多分”正気”も居たんだよ」
「なに…正気が居るって…」
「本当に狂ってなかったってこと」
「…そんなの、わかるの?智」
「多分…自分を痛めつけるために、わざとやってたと思う」
「え……?」

多分、あん時の雅紀は…
自分を痛めつけることで、正気を保ってたんじゃないかと思う。
そういう方法じゃないと、生きていられなかったんだと。
そのくらいのショックを、受けていたんだと。
そう、思っている。

「松本くんは…たまに正気に戻るだろ?」
「うん…」
「だから、今、彼の中でなんか戦ってるんじゃないかと思う。その決着ついたら、戻ってくるんじゃないかなとは思う」
「雅紀がそうだったの…?」
「だな…俺は普通に生活して、雅紀も普通に生活させて…そしたら、いつの間にか大人しくなって…それから戻ったよ?」
「戻った…」
「昔の雅紀ってわけには行かなかったけどさ…でも、正気には戻った」
「ふうん…そっかぁ…」

ちょっと首を傾げて、また和也は頬杖をついた。

「…この前…ちょっと松本が喋ったんだ…」
「へえ…なんだって?」
「夢…あるんだって…中学からの、夢…」
「え?夢…?」
「野球やってて…松本。小学生の時からずっとやってたんだって…でも、肘を壊して…もうできないんだって」
「ああ…野球肘ってやつか…?あれ手術しても治んないやついるらしいな…何回もしないと…」
「そうみたいだね…俺も小学生の時は野球やってたから…」
「え?和也、野球やってたの?」
「うん。言ってなかったっけ?」

少し、寂しそうに笑った。

「だから…野球できないなら…プロ野球の球団職員になるのが、夢だったんだって…」
「へえ……」
「お父さんが…いくらでも野球に関わっていく道はあるよって…教えてくれたんだって…」

でも潤は…高校は中退してしまっているし…
球団職員への夢は…自ら絶ってしまったのか…
それとも絶たれてしまったのか。

和也は、また頬杖をついて。
それから窓のほうへ目を向けた。

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