第16章 BOY【O side】EP.9
「でも俺…」
雅紀に頬を手で包まれて上を向いている和也は、雅紀を見つめたまま小さな声で呟いた。
「責任取らなきゃ…」
「え?なんの責任?」
「……」
それきり黙ってしまって。
雅紀が俺の顔を見て、戸惑った顔をしている。
「和也」
呼ぶと、ゆっくりと和也は俺を見た。
「松本がああなった責任が自分にあるって思ってんのか…?」
「…うん…」
「なんでそう思ったの?」
雅紀が聞くと、諦めたようにソファの背もたれに背中を預けた。
「…多分、松本は俺のこと好きだったと思う…」
「え?でも、松本くんってストレートだったんだよね?」
「自覚してなかったんじゃないかって…思ってる」
「…それは、あいつにゲイの素質あんのにってこと?」
そう言うと、ゆっくりと和也は頷いた。
「すごく…いつも視線を感じてて…俺の勘って結構当たるんだ…だから、多分…」
背もたれに凭れながら、どこか遠くを見るような目で思い出してる。
「俺のこと、二丁目で見たって…最後に会ったとき言ってた…」
「二丁目…」
「ヒュアキントスの客と、飯行ってからホテル行った日に、見られたんだと思う」
「松本潤がそう言ってたのか?」
「うん…言ってる最中、すごく辛そうで…吐いてたし…」
「なんでそんなとこに居たんだろ…」
雅紀が言うと、少し俯いた。
「…その日に、なんかあったんじゃないかな…」
だから、自分に責任があるって和也は思ってたみたいだった。