第16章 BOY【O side】EP.9
夜に入ってから、潤は目を覚ました。
和也がそっと近づいて話しかけたが、まるで話にならなかったそうだ。
「夢…みてるみたいでさ…」
「そっか…」
雅紀が肘掛けに座って、ソファに座ってる和也の頭を撫でてる。
「またすぐ眠ったけど…シーツに血…付いてて…」
「うん…あれ、今日できた傷なんだって…」
さっき晩飯を食うまでは、和也はずっと潤の側に居た。
那子子に頼んで包帯やらなにやら買ってきて貰って、怪我してるとこは覆ってみたけど、手にはそれだけじゃ間に合わないほどの傷があった。
よっぽど酷く抵抗したんだろうな…
「今日…」
ずっと和也は潤から離れなかったから、詳しい話はしていなかった。
「…松本…どうして、あんな目に遭ってたの…?」
和也が、俺たちを見上げた。
俺は手に持っていたマグカップをテーブルに置いて、向かいのソファに腰掛けた。
「借金…返してたらしい」
「えっ…松本の家の借金?」
「…いや、違う。恋人の借金、返してたみたいだ…」
「え……?」
訳がわからないって顔してる。
どうやら、和也の知っている"松本くん"とは、大きくかけ離れているようだ。
「どうして…そんなことに…」