第16章 BOY【O side】EP.9
家に戻ると、和也は玄関でうずくまっていた。
潤の顔を見せてやると、和也は目に涙をためて頷いた。
「松本…どうして…」
後は、声にならないようだった。
家に入って手前の寝室に潤を寝かせると、和也はベッドサイドから動かなかった。
「そっとしておこう…」
雅紀が言うから、寝室に和也と潤を残して、俺達はリビングに入った。
「秀俊…本当に、こんな早く…ありがとう」
「いや、いいんだ…ちょっと、別の用事のついでで見つけたから」
「え?そうなの…?」
そう言うと、二人は見つめ合って少し笑った。
「むう…」
気に入らねえ…
ボスっとソファに座ると、雅紀はキッチンの方へ向かった。
「秀俊、座ってて」
「あ、茶とかいいから…」
「え?でも…」
「藤ヶ谷待たせてるからいいよ」
そう声を掛けると、スーツの懐からなにか取り出した。
封筒に入った書類だった。
俺の方を見るから、近寄ってその書類を覗き込んだ。
雅紀も後ろから覗き込んだ。
「…これが、あの松本潤と一緒に居た、白石って男の借金を肩代わりするって、サインした書類…」
「白石って…誰?」
雅紀が聞くと、西島は親指を立てた。
「ああ…」
あとから聞いたら、潤のヒモってことだった。