第16章 BOY【O side】EP.9
しかし、すぐビジネス用の顔を作った。
さすが小さいとはいえ、織田組の若頭補佐なだけある。
「そいつの書いた書類一式は、俺が預かった。内容を確認してから、そっちに渡す。まだなんか隠してあるかもしれない」
「…そんな複雑な事情が?」
チラと、また俺を見る。
それからシートベルトを外して、外に出た。
慌てて雅紀も後部座席のドアを開けると、潤の体を引っ張った。
俺も逆サイドのドアを開けて、外に出る。
回り込んで雅紀を手伝おうとしたら、西島が雅紀を手伝って潤を外に出した。
「おい。藤ヶ谷」
「はい」
運転席でハンドルを握ったまま、藤ヶ谷は答えた。
「ここで待ってろ。すぐ戻る」
「わかりました」
藤ヶ谷も降りてきて、潤の荷物らしきものをトランクから出してきた。
トランクケースがひとつと、小さなボストンバッグがひとつ。
「…こんだけ…?」
「ええ…こんだけ」
藤ヶ谷は俺に荷物を手渡すと、ぺこりと頭を下げて車のドアを閉めた。
バタンと音が響く中、雅紀と西島は潤を担いで中に入る自動ドアに向かっていた。
慌てて追いかけて、先に自動ドアからはいって3人を待った。
「少し、話す時間あるか…?」
西島が俺に向かっていう。
「ああ。聞かせてください」
エレベーターのボタンを押しながら、気まずい沈黙が漂った。