第16章 BOY【O side】EP.9
「やめなさい。今どきそんなことする人いないから…」
そう言って、小指を閉じさせた。
「そうか?」
「そ。おっさん臭いんだからね?」
「おっさん…」
小指をまた立てて、那子子は真顔になった。
「ぶぶ…コーヒー、ありがとうね」
雅紀が言うと、那子子は笑った。
「いつもと顔違う。だから心配」
「そう…?そっか…バレちゃってたか…」
雅紀は苦笑いすると、ペチペチと顔を叩いた。
「なんか、やれることあったら言って。友達も声かける」
「うん。ありがとうね那子子。大丈夫だから…」
そう言うと、軽く手を上げて那子子はフロントに戻っていった。
「はぁ…那子子にまでバレるほど顔に出てるか…」
「雅紀、いつもじゃん…」
「はあ!?」
「わかってなかったの…?」
「…そんなに顔に出る…?」
まあ…俺とか気を許した奴の前じゃモロだけど…
仕事の時は、何考えてるかわかんない笑顔を浮かべてるから、見る人がみたら不気味かもしれないけど…
「あ」
そんなことをぼーっと思ってたら、雅紀が外を見て声を出した。
思わず俺も外を見ると、黒塗りの車が横付けされてる。
雅紀が飛び出していった。
俺も慌ててコーヒーを飲み干して、あとを追いかけた。
舌、やけどした。
なんで外は暑いのにホットコーヒーなんだよ!那子子!