第16章 BOY【O side】EP.9
「そぉっかぁ…残念…」
「なんで?毎日仕事に来てもらうんだから、いいだろ?」
「いや、そうなんだけどさあ…」
和也は俺のトレーナーの胸板にぐりぐりと額を擦りつけた。
「…なんだよ?」
「んー…?」
珍しく、言い淀んでいる。
いつもはズバッとバリッとストレートに物を言うくせに。
ホントは、ちょっとシリアスなシーンになると、口ごもっちゃうんだよな。
「…かわいい奴め…」
「なぁんだよぉ…」
ぐしゃぐしゃと、パーマの頭を撫でてやると、やっと顔を上げた。
「翔がうちに住まないと、なんかあんの?」
「いや、そうじゃないけどさぁ…」
ちらっと部屋を眺め渡すと、すぐに俺に顔を向けた。
「せっかく潤くんが…本気になれる相手、見つかったのに…」
「ああ…」
ぎゅっと和也が俺の手を握った。
そのまま、俺の胸板に顔を乗せると、ちょっとだけ…
憂鬱な顔をしてみせる。
「…でも、しょうがないじゃん?」
「そう、なんだけどさあ…」
「弟や妹が、こっち来たって俺達だって息苦しいし、あっちだって知らんおっさんに囲まれたらビビってのびのびできねえだろうよ」
「そおなんだけどさあ!」
がつっと額で俺の胸板を頭突した。
「ぐお…」
まあ、和也がこんな風になるのも…
わかる気がする。