第3章 ヤギは嫌いだ from 99.9%のDNA
小さい店だから、厨房は雅紀、フロアは俺だけの店だ。
だから、お互いに足りないところを補い合って普段は店をやってる。
けど、クリスマスだけは…
雅紀のキャパがオーバーしちゃうんだよね。
忙しすぎて。
もともとキャパ小さいしね…
だから、こんなのも…まあ、覚悟してた。
せっせとナプキンを畳み直して、開店準備を始めた。
厨房からはソースのいい匂いが漂ってる。
テーブルのセッティングができたら、ロッカーに戻ってベストと前掛けを着けて…
「店長!開店の時間です」
狭いロッカーを出ると、厨房の扉を開けた。
「ああ。わかった!」
まだちょっとごたついているようだが…
「では、開店します」
「よろしく!」
入り口の配電盤の近くにある、表の看板のスイッチを入れた。
すぐに入り口の鍵を開けて、表に出た。
「あ」
「あ。こんばんは。風間さん」
雅紀の後輩くんが居た。
松本くんとそのお兄さんだ。
「いらっしゃいませ」
ペコリと頭を下げると、ふたりも頭を下げた。
「ちょっと早く着いちゃって…」
「そっか。寒かったでしょ、入って?」
ドアの看板を「OPEN」にして…
照れたように笑うふたりを早速店内に案内した。