第3章 ヤギは嫌いだ from 99.9%のDNA
「しゅ~ん!俊介っ」
慌てた雅紀の声が俺を呼ぶ。
「なあに?どうしたの…」
蝶ネクタイを首につけて狭いロッカールームからフロアに出ると、テーブルの上にぐしゃっと不器用にナプキンが山になってた。
「…なにしてんの…」
「ご、ごめぇん…俊介の手伝いしようと思って…」
思って、手を出したらこうなった、と。
うん。わかるよ。わかる。
君は不器用だ。
「そう…うん…わかったから、仕込み戻りなよ?ね?」
「ごめんっ…ごめんっ!」
手を合わせてペコペコ謝ってる。
またその姿が、笑いを誘うっていうかさ…
憎めないんだよねぇ…ホント。
「ぶっ…もう、いいから…ほら、ソース焦げちゃうよ?」
「あっ…ごめんねっ…」
バタバタと厨房に戻っていく後ろ姿を見送って、テーブルに目を戻した。
昨日、今日の仕事が楽になるようにきちんと畳んで後は並べるだけにしといたナプキンのセットが見事にぐちゃぐちゃになっていた。
「畳み直しか…」
今日はクリスマスイブ。
だから、雅紀の店はクリスマスディナーの予約でいっぱいだ。
いつもの倍予約が入ってるから、テンパっちゃうよね。
もともとテンパリストだし…
「ぶぶ…かわいい奴…」