第15章 BOY【M side】EP.8
香川は一瞬目を見開いたが、すぐに狡猾そうな表情に変わった。
「そんなんじゃ…足りねえなあ…?」
「…足りない分は、本人に返してもらったら?」
「は?オイオイ…西島さんよ…」
「今回は、俺に直々の依頼でよ…わかるか?」
「…え…?」
「香川さんなら、言わなくてもわかるだろ…?」
「そ…それは…どっちの筋から…?」
くいっと西島という人は、天井を指差した。
「うわぁ…もう…しょうがねえなあ…じゃあその金で手打ちにしてやるよっ」
「すまんね。このお返しはまた…」
「ふん!オイ、白石!てめえ、ヤバい筋のモン連れてきてんじゃねえぞ!」
ドスドスと香川の歩く音が遠ざかっていく。
西島は香川の去った方を見て、苦笑いした。
「そ、そんな…潤はっ…」
「ふざけんな白石っ…」
悲鳴みたいなあいつの声が遠くから聞こえてくる。
「…服、着ろよ…」
今度は、俺のこと陰鬱な目で見ている。
「ここから、連れ出してやるから…」
「え…?」
何がなんだかわからなかった。
また、騙されるのか…?
でもこれ以上酷い暮らしってなんだろう。
外国で、猿みたいに檻に入れられて売られるより、マシなのかなぁ…
ぼんやり考えてると、西島は後ろを向いて誰かを呼んだ。
「藤ヶ谷。動けないみたいだから、代わりにやってやれ」