第15章 BOY【M side】EP.8
あいつはヘコヘコしながら部屋を出ていった。
残された部屋の天井を見ながら布団で寝転がっていると、薄い壁越しに隣の部屋から日本語じゃない怒鳴り声が聞こえる。
似たような境遇の…借金を抱えてるやつなんだろうな…
「ふ…ふふふ…ふふふふふ…」
なんで…まだ、生きてる…
なんでまだ、いぎたなく生きてる
…滑稽だ
こんな無様で惨めなことしながら、まだ生きてるなんて
あいつのこと、醜いって思うけど…
俺のほうがもっと醜い
天井についてる、むき出しの照明が眩しくて。
手をかざした。
その手には擦り傷と痣がたくさんついてて。
顔も体も…至るところ、怪我だらけだ。
この怪我が治った頃、また次の撮影が入って…
一ヶ月に2本のペースで、怪我だらけになる。
「あ…うがい…」
あんまり今日はひどく痛め付けられたから、うがいをするのを忘れてた…
口にも汚いもんぶちこまれてるんだから、うがいしとかないと喉が炎症起こす。
仕方なく、壁伝いに立ち上がった。
なんとか足を進めて引き戸までたどり着くと、勝手に向こうから戸が開いた。
「あ…」
そこに立っていたのは、みたことない背の高い男で。
でも雰囲気から、すぐにヤクザだと分かった。
それもとびきり偉い人…
見たとこ40代位だろうか。
精悍な顔立ちなのに、眉間に深いシワが刻まれてる。