第15章 BOY【M side】EP.8
布団の横に、もうひとり黒スーツの男が立っている。
直立不動の姿勢で、後ろで腕を組んで、もうひとりの男をじっと見ている。
「ふーん…顔の傷治りゃ、上玉じゃねえか…」
コートの男はニヤリと笑うと、俺に手招きした。
何が起こってるのか、全然わからなかった。
逃げ出したい衝動に駆られて、とっさに玄関のドアを開けた。
でも、ドアの外にはもうひとり、厳つい顔をした男が立っていた。
「え…?なんなんだよ…」
「戻れ」
奥から出てきた黒スーツに腕を掴まれて、無理やり玄関から部屋の中に引きずり込まれた。
「おい…白石…この兄ちゃんにナシ通してねえのかよ…?」
「ひいっ…ひいいっ…」
ロングコートの男は、革靴を履いたままの足であいつを蹴りまくってる。
あいつは布団の上で体を丸めて、されるがままだ。
いつもの俺みたい…
酷く、滑稽に見えた。
黒スーツは俺のこと畳敷きまで連れていくと、無理やり座らせた。
あいつを蹴ってたコートを羽織った男は、じっと俺を見た。
「兄ちゃんよお…この白石のバカが、アンタが借金払うって言ってんだけどよお?」
やっぱり…この人達、ヤクザだ…
あいつがいつもシャブ買ってる人たちなのかもしれない。