第15章 BOY【M side】EP.8
「え…?金…?」
「ああ…うちのカイシャのもんに、たんまり借金してくれてんだわ…今日は特別に俺が回収しにきてやったのに、一文無しと来てんじゃねえか…」
また一発、丸まって震えてるあいつの脇腹を蹴り上げた。
「ひいぃっ…」
変な声を上げて、また丸まった。
「で。代わりに兄ちゃんが払うと、白石が言ってるんだがな。本当に兄ちゃん、払う気あんのか?」
「俺が…?」
「頼むよおっ…潤っ…この人達の言うとおりにしてくれよぉっ…」
「やかましいな…オイ…そのバカ、連れてけ」
コートを羽織った男は、黒スーツに命令した。
黒スーツは布団の上に丸まってるアイツを乱暴に立ち上がらせて、ケツを蹴りながらどこかに連れて行った。
玄関の閉まる音が聞こえると、部屋の中はシンとした。
「…なあ?兄ちゃん…ジュンだっけ…?」
にたりと笑うと、畳に座ってる俺の目の高さまで体を折り曲げた。
ヤクザなんて…こんなに近くで見るのは初めてだった。
たまに客引きしてるときに、追っ払われたりするけど…
「ぴったりのいい仕事があるからよ…」
スーツの懐から封筒を出すと、ボールペンを出してきた。
「さ、サイン…してもらおうか…」