第15章 BOY【M side】EP.8
「おいおい…何する気だよ…」
「紐作る」
「紐…?何するんだよ?」
「なんでもいいでしょ。ねえ、ハサミ…」
そう言って見上げた男は、薄ら笑いを浮かべていた。
さらさらの手入れしていない髪が目まで掛かってて。
目に入って痛くないのかなって思った。
細い目を、また更に細めてニヤついているのが不気味で。
薄い唇をべろりと舌で舐めると、また笑った。
「……死ぬつもり?」
ズバリ言われて、少し動揺した。
あまりにも…そのセリフと表情が一致していなくて。
「だから何だよ」
声が少し震えた。
また舌で唇を潤すと、男は俺のすぐ近くまで歩いてきた。
俺より20センチほど背が高い。
でもガリガリのヒョロヒョロで…一体なにをして生活しているヤツなのか見当もつかなかった。
「…殺してやろうか…?」
男は、なんにも返事をしていないのにペラペラ語りだした。
「いい薬知ってるから…それ、調達してやるよ…苦しまないで死ねるんだって。練炭なんか楽に死ねるって言うけど、あれは嘘だ。水の中で溺れるのと同じくらい苦しむんだってよ。硫化水素なんて、上から下から汚物出して悶えながら死ぬんだよ…首縊りなんて、内臓がケツから出るんだぞ?」
それから、一呼吸おいて。
俺をまっすぐ見た。
「どうせ碌な人生じゃなかったんだろ…?最期くらい、綺麗に死にたいだろ?」