第15章 BOY【M side】EP.8
布団の上に立って、紐を引っ掛けられるところを探した。
部屋の中はガランとしてて…
夏に使う扇風機が出たまんまになってて。
安っぽい電気ストーブがあって、その横にテーブルがある。
テーブルの上には郵便物やら、弁当のゴミやらが散乱してた。
その奥の台所にも、流し台にコップが一個見えるだけで食器類は見えない。
小さな冷蔵庫が申し訳程度に置いてあるだけだった。
紐を引っ掛けられそうなところはなかった。
残るは…
浴室に入るドアノブ。
あれでいいや…
風呂の中で吊れば、死んだ後の掃除もしやすいだろう。
こんなところで死んだら、拾ってくれたこの男に迷惑がかかるのはわかってた。
あらぬ疑いをかけられるかもしれない。
でもそんなこと、もうどうでもよくて。
部屋の中に紐がないか探したけど、残念ながらないようだった。
しょうがないから、着ていたTシャツを脱いだ。
切り裂いて縛れば首を吊るくらいできるだろう。
「オイ…なにしてんだ…?」
風呂場の前で立ってる俺に、男が声を掛けてきた。
無視して、Tシャツを引き裂いた。
「え…?なにしてんだよ…」
なかなか破れなくて、苦労した。
「ハサミないの…?」
そう言って、男の方を向いた。
男はぎょっとした顔をして立ち上がった。