第15章 BOY【M side】EP.8
足が震えてくる。
こんな明るかったら、俺をみんなあざ笑うと思った。
虫ケラ以下の…
一万円の…
価値のない俺を
逃げなきゃいけない。
でも、どこに…?
どこにも、行く宛なんかない
「…二宮…」
そうだ
二宮。
あいつに連絡すれば…
スマホを鞄から取り出した。
充電が切れてた。
真っ暗な画面に、みっともない俺の顔が反射して写った。
思わずスマホを手から落とした。
アスファルトを滑って、スマホは視界から消えていった。
「…あ…ああああ…ああああ…」
早く、どっかで死ななきゃ
逃げなきゃ
この世から、逃げなきゃ
「オイ、これ…」
誰かが俺の肩を掴む。
「落としたでしょ?」
知らない男。
知らない声。
「…アンタ…?大丈夫かよ…?」
殺してくれ
俺を殺してくれ
「ちょっと…!」
視界がぼやけて、なんにも見えなくなった
次に目が覚めたら、知らないアパートに寝かされてた。
さっきスマホを拾ってくれた男が、隣で寝てた。
俺のことは布団に寝かせてくれて、自分は座布団で布団もかぶらず横になってる。
トランクスにTシャツだけの姿で…
自分の格好をみたら、似たような格好で…
布団の中に立ち込めてる、他人の精液の臭いに吐き気がこみ上げる。
自分の体についてた、あの男たちの欲の臭いだ。
せめて、風呂入ってくればよかった…
あそこサウナだったみたいだし…
死ぬ前に、綺麗にすればよかった